
|
2024年8月8日に、横寺町の路地の奥に梅花亭のお茶室「ふふみ庵」が開庵しました。開庵を記念して行われた和菓子教室とお茶体験を、当サイトの長岡弘志が体験取材をしてきました。
![]() ■出席者 井上豪氏(梅花亭四代目) インタビュアー 長岡弘志(かぐらむら編集長) 長岡 和菓子屋さんがなぜ茶室を作り、和菓子教室だけではなく茶道の教室まで設けたのか、とても興味を持っております。お茶にはお菓子がつきものとはいえ、和菓子屋さんで茶室まで設けるのは珍しいのではないでしょうか? ![]() インタビュアー 長岡弘志(左)/梅花亭四代目 井上豪氏(右)
井上 和菓子屋さんの中でもお茶の稽古を長く続けている方は少ないですね。わたしが東京和菓子協会 青年部の長をしていた当時も、「お茶はやれども長くは続かなかった」という方が多くて。わたし自身も子どもの頃から興味はあったのですが、機会がなくて本格的にはじめるまでには至りませんでした。 ![]() 長岡 東京和菓子協会とはどのくらいの規模ですか? 井上 多い時には七十人くらいおりましたが、私が長をやっていた頃は六十人程でした。その青年部の有志で集まって勉強会を開こうとなり、どうしたものかと裏千家の事務所に問い合わせたところ、裏千家教授でいらっしゃる松浦宗光先生をご紹介いただきました。松浦先生のご指導のもと、紀尾井町にある偕香苑で茶事体験をしたことが本格的なお茶との出会いです。青年部の長だった流れから裏千家に入門させていただき、今年で十三年目となります。 長岡 井上さんは九十年もの歴史がある和菓子屋の四代目でいらっしゃる。先代や先々代から「和菓子を作るならお茶も習いなさい」とは言われなかったのですか? 井上 実は言われたこともございます。祖父も父もお茶を学んでおりましたので。ただ、父が早く亡くなったことと、父が習っていたお茶の先生がご高齢だったこともあり、踏み出す機会を得られませんでした。神楽坂に引っ越してからですね、お茶をはじめたのは。 長岡 ふふみ庵のあるこの路地は、百年ほど前は島村抱月と松井須磨子の芸術座のあったところですね。 ![]() 井上 ええ。そうなんです。 長岡 本日、和菓子作りの体験に参加させていただきましたが、皆さん熱心でしたね。指の腹を使ったり、手のひらを使ったりが楽しくて、わたしも夢中になってしまいました(笑) ![]() 井上 楽しんでいただけて何よりです。和菓子作りに興味のある方は多いのですが、体験できる場所はあまりないんですよね。 ![]() ![]() ![]() 長岡 今日いちばん驚いたのは、講義用のキットがあったことです。指導の通りにやれば、誰でも作れるように標準化されている。上生菓子を作るこの教材を考えられたのは井上さんですか? ![]() 井上 はい、これまで教えていたことの経験を生かさせてもらいました。 長岡 実によく考えられていて、全然無駄がないというか……。 井上 そうですね、開けたカップにまた戻して、そのままお持ち帰りいただくようになっております。 ![]() 長岡 多少不器用な人でも言われた通りにやれば、一定以上のクオリティのものが出来上がるわけですね。 井上 幼稚園のお子さまからご高齢の方まで、幅広い年齢層の方々に生菓子づくりを楽しくご体験いただいております。 長岡 和菓子や日本文化を伝えたいという思いもあって、教室を開かれているのでしょうか。 井上 文化庁でも和菓子の重要性を認識し、製造技術や文化を「登録無形文化財」に認定しました。特に煉切りやこなしといった生菓子の技術は、世界でも和菓子だけです。和菓子は大切な日本の伝統文化ですから、その素晴らしさを多くの人に知っていただきたいと思っております。 ![]() ![]() 長岡 井上さんはイギリスに招かれて和菓子の講座(※1)まで開かれていましたね。日本だけではなく、世界でも和菓子の魅力を伝えていらっしゃる。 ※1 外務省を通じて英国大使館からオファーを受けて和菓子の講演と、スコットランドやエディンバラ、セントアンドリュース大学、ロンドンのル・コルドンブルー校などで和菓子の作り方や文化についての講義を行った。 井上 わたしは、「選・和菓子職(※2)」の優秀和菓子職でもありますので。 ※2 全国和菓子協会が日本全国の優れた技術を持つ和菓子職人を公平に評価・認定する制度。現在、選・和菓子職は日本で150人が認定されており、和菓子の啓蒙も担っている。 長岡 選・和菓子職には試験などがあるのですか? 井上 二次試験までございます。選・和菓子職では伝統和菓子部門と、優秀和菓子職部門があるのですが、なかなか狭き門ですね。こちらは海外のマイスター制度のようなものを和菓子でも作ろうと、全国和菓子協会が立ち上げたものです。 長岡 井上さんは新宿ものづくりマイスター(※3)や東京マイスター(※4)も受賞されていますよね。 ※3 新宿区で10年以上ものづくり産業に従事し、後進の指導を行っている模範となる方が対象。井上氏は平成二十六年「技の名匠」に認定された。 ※4 東京都が優れた技能を持つ職人に贈る称号。平成二十八年度に受賞。 長岡 神楽坂でお茶室を持つことは長年の夢だったのでしょうか? 井上 茶名(※5)を拝受した身として、自分のお茶室を持ちたいとずっと思っておりました。 ※5 茶人として活動する際の名前。長期間の稽古を行い、技術と知識を身につけた後、師匠の推薦を受けて、家元から正式に茶名が授与される。 長岡 志満金の加藤正(ただし)さんも、長くお茶をやられていますよね。店の地下に山庵という素晴らしいお茶室もある。 井上 志満金さんも裏千家なので、同じような夢を持たれていたのではないかと思います。実は今回の体験会に加藤さんもお誘いしたのですけれど、ご多忙のためお越しいただくことは叶いませんでした。 ![]() 長岡 今後、どのくらいのペースで和菓子作り体験やお茶会を行う予定なのですか? 井上 今回はイベントとしてお茶の体験を行いましたが、毎回先生をお招きするわけにはいかないので、茶室ふふみ庵は貸し出しで考えております。茶名は拝受したけれど、お稽古のお茶室を持たれていない茶人の方に向けて、門戸を開きたいと思っております。 長岡 神楽坂には、さまざまな茶室がありますが、天神町には小笠原流の教室がありますよね。 井上 小笠原流の春風庵さんですね。前の回にお越しくださいました。春風庵さんで水墨画をやっているのですが、そのつながりでNHK大河ドラマ『光る君へ』の題字揮毫および書道指導をなされている根本 知(さとし)さんとのご縁ができまして。今回、ここの「ふふみ庵」の看板を『光る君へ』っぽく書いていただきました(一同笑) ![]() 長岡 井上さんが上生菓子にこだわる理由というのは? 井上 手先が器用だったということが出発点です。父が早くに亡くなり、後を継いだ叔父があまり器用な方ではなく。ある日、叔父から「お茶の上生菓子を作ってみろ」と言われました。それ以来、ずっと作り続けております。これがお茶の世界を知ったきっかけでもありますね。 長岡 タウン誌かぐらむら(2016年2月号)「マイスターたちの美しき手仕事」でも、鋏の先を使ってちょんちょんと花弁を作る姿を紹介させていただきましたが、本当に見事でした。 ![]() 長岡 神楽坂で様々な取り組みをされている方がいらっしゃいますが、このような伝統文化に携わる草の根活動は重要ですね。行政が音頭を取ってやるのではなく、「ふふみ庵」のような民間企業が場所を作って、自分たちの活動の拠点にもするし、活動をしたいという方に貸し出しもする。非常に意義のあることだと思います。ところで一階は和菓子限定のスペースになるのですか? 井上 お料理教室や貸しギャラリーなども考えていますが、最終的な目標としては茶懐石を行いたいと思っております。練切りというのは茶事の最後に出てくる生菓子なのですが、どのくらいの甘さが良いものか、茶懐石をやってみないとわからないのです。改めて、お茶は日本文化の集大成だと感じています。 長岡 お茶席の上生菓子では何十個も作るのですか? 井上 大きな会の依頼ではそれこそ二百から三百ということもございます。一人ではとても無理ですので、みんなで作ります。特に春と秋が多いですね。ちょうどこれから忙しくなっていきます。 長岡 以前、見せていただいた巻物みたいにした和菓子の絵がありましたね。あれは井上さんがお描きになったのですか? ![]() 令和六年の和菓子の見本絵
井上 そうです。美大時代に絵を描いておりましたので。 長岡 和菓子はただの食文化だけではなくて、日本の季節を写していたり、植物図鑑的な意味合いもあったり。 井上 和菓子は季節だけではなくて、歌も関わってきます。 長岡 今回作った和菓子、秋の花でしたね。 井上 二十四節気(にじゅうしせっき)で今日はもう、秋になりますので。 長岡 これからはギャラリーの要素も楽しみですね。 井上 そうですね、和菓子絵展もいいですね。実はうちの従業員で折り紙作家がいまして、「展示をしたい」と言っているので、折り紙展をやろうかと思っております。 長岡 展示会、いいですね。ギャラリー用のレールがついているから、取り外しも楽ですね。 井上 テーブルを壁につけてコの字にすれば、彫刻など立体も展示可能です。 長岡 これからの「ふふみ庵」が楽しみです。本日はありがとうございました。 ![]() ![]() 【DATA】 梅花亭別邸ふふみ庵 住所:東京都新宿区横寺町10番地 最寄駅: 東京メトロ東西線 神楽坂駅から徒歩3分 都営大江戸線牛込神楽坂駅から徒歩3分 公式HP : https://fufumian.stores.jp/ 公式インスタグラム:https://www.instagram.com/fufumian_baikatei/ |
Cookies🍪 & Confidentialité
Ce site utilise des cookies et Google Tag Manager afin d’analyser l’utilisation et d’améliorer les services. Vous pouvez autoriser ou refuser l’utilisation des cookies non essentiels. Pour plus de détails, veuillez consulter la Politique de confidentialité.